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私の愛する映画シリーズ 第7回「ハワイ・ミッドウェイ大海空戦 太平洋の嵐」

監督/松林宗恵
脚本/橋本忍、国弘威雄
特技監督/円谷英二
音楽/團伊久磨

松林宗恵監督が亡くなられた、という事で、追悼の意味で、前倒しして、「太平洋の嵐」について書こうと思います。
名女優・上原美佐の引退作品でもあります。
物語については、真珠湾攻撃からミッドウェイ海戦までの、「史実」の話です。
脚本は黒澤明作品でおなじみの橋本忍氏。
「私は貝になりたい」や「日本沈没」のなどの脚本も書いた方です。

真珠湾攻撃に参加することとなった北見中尉(夏木陽介)。奇襲は見事に成功し、故郷に帰ると英雄として大歓迎されます。
許婚の仲の啓子(上原美佐)もおり、彼女とはインド洋での作戦の後に結婚式を挙げる事となるのですが、結婚式の日に、「タダチニカエレ」という電報が…。
北見は啓子と「握手」という形で結婚をし、ミッドウェイ戦線に向かう事になります。
しかし待っていたのは敗戦という辛い現実でした…。

物語は史実に沿っていると言っても、先に書いたように、主人公の北見中尉の視点で進んで行きます。
真珠湾攻撃で奇襲に一応成功し、許婚の人である啓子もいるという幸せな気持ちであり、「五尺の体を祖国に捧げる」とまで言ってしまってウハウハな状態な北見。
しかしミッドウェイの敗戦でそれも一転、戦争の暗黒の一面を見ることになります。

日本が戦争に勝っている時は、北見は戦争がどうだ、などとは考えません。
ミッドウェイにおいて負けて、酷い目に遭ってやっと戦争の現実を知ったのです。
戦争というのは、一見勇ましく見えるものであるが、実は残酷、冷酷、無常なものであると…。
ミッドウェイ攻撃時に、北見は予想もしなかった米軍の猛攻撃に遭います。
そして、上官である友永中尉(鶴田浩二)が戦死、戦友の松浦中尉(佐藤允)は重傷を負います。
さらに容赦なく北見の乗る空母・飛龍に続くアメリカ軍の猛攻撃。
遂に飛龍は持ちこたえられなくなり、北見を含めた生存者は脱出します。
しかし、司令官山口多聞(三船敏郎)と加来艦長(田崎潤)は船と運命を共にすることを決意し、重傷者は梅崎軍医(太刀川寛)と共に船内に残されます。
その中には北見の戦友である松浦もいました。
彼らは船と共に死ぬという運命に一切抗いません。
ただ黙っているのみ…。
ここでの太刀川寛と佐藤允の演技が泣かせます。
もう脱出できる体ではない松浦。
しかし患者を見放す訳もなく、己の役目を全うする梅崎軍医…。
戦争では、己の役目を全うするということは死と隣り合わせであるという現実があります。
そして、傷ついた、戦えない人間は容赦なく見捨てられる現実もあります。

あまりファンの間では語られない、太刀川寛と佐藤允の演技の場面ですが、私はこの場面に、松林監督の戦争への「静かな怒り」を感じます。
戦争が招いてしまった悲しい現実…。
未来がある筈の若者が容赦なく死んで行く現実。
松林監督は、この映画に無常観、儚さという観念を添えました。
最初は勝って陽気なのに、いつの間にか酷い状態に追い込まれるこの映画の物語、まさしく「諸行無常」です。
そして勇ましく戦っている若者も、戦争で呆気なく命を散らしてしまうという儚さ…。
北見はこの現実を見せられ、「これが戦争なんだ」と知るのでした。

しかし帰ってきた北見はそんな「現実」を見せられた故に、九州(?)の航空隊の基地に隔離されます。
そして、生きて帰れそうもないような所に派遣される、という所で物語は終わります。
最後、飛行機に乗った北見は、部下から「祖国の見納めに」と、旋回して祖国を見納めすることを勧められるのですが、北見は、「その必要無し」と返します。
オーディオ・コメンタリーでの松林監督のお話によれば、ここに当時の軍部への精一杯の怒りを込めたそうです。
「戦争の現実」を知った者が居ると、戦意高揚に差し支えが出るから、死ぬような戦場に送ってしまえと…。
若者を容赦なく死地に送る、という事は未来のある若者を「物」として見ていなかった軍部への怒りがある訳ですよね。
北見には愛する母(三益愛子)と妻・啓子が残されているのに…。

「太平洋の嵐」には、そういった戦争への、強い「静かな怒り」が込められています。
ただ声高に戦争反対を叫ぶよりも強い説得力が感じられます。
本当の「怒り」っていうのは声にはとても出せないものです…。

今、我々日本人は、戦争に対する怒りを忘れてはいないでしょうか。
私は、イラク戦争時、世論調査で開戦を支持するという人が半分ぐらいいた事に、小学生ながらに恐ろしいと思いました。
今思えば、支持した人は戦争の現実を知らなかったのかと思います。
そして、戦争で家族や友人を失った人々の、声にも出来ない「怒り」を想像出来なかったのでしょうか…。
我々日本人、いや人類は、関係もない一般市民や、未来ある子どもや若者、色々語り継ぐべきものを持っている老人なども容赦なく殺してしまう「戦争」、そしてそれを引き起こす権力者に対して、「怒り」を感じるべきなのではないでしょうか。

そんな事も考えさせられる「太平洋の嵐」。これからも、人類が続く限り見続けられるべき映画ではないでしょうか。
「太平洋の嵐」に込められた「静かな怒り」「儚さ」「無常観」を語り継ぐのが、私の様な若い世代の義務なのかもしれません。

次回は「世界大戦争」について書こうと思います。
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初めまして

ゾンデ5号さん、初めまして。流星と申します。
少し以前から拝見してまして、レビューを楽しく読まさせていただきいろいろと参考にしております。私は25なんですが、ゾンデ5号さんは高校生でいらっしゃるのですね。素晴らしいレビューに感動しております。これからも色々な作品の更新を楽しみにしてます。
私もHPで感想を少し書いたりしてますが、主に東宝を中心としたスタッフや主役級俳優・脇役俳優の研究をしています。後ほど私のHPのリンク集にゾンデ5号さんのブログを次の更新時に追加したいと思います。今後とも宜しくお願い致します。

さて、中丸忠雄さんに続いて先日の松林監督の訃報を聞き悲しいです。
私は松林監督作品では戦記映画中心に見てますが、戦争の悲惨さや悲劇・怒りが込められていて、それらの作品を見て”戦争”というものについて見る度に考えさせられます。
この間「潜水艦イ-57降伏せず」を観たばかりでした。
松林監督は他にも「帰ってきたウルトラマン」を2本、「ゴルフ夜明け前」や喜劇作品、「女王蜂」では市川監督多忙のために代わりに協力監督として携わったりしてました。
松林宗恵監督のご冥福をお祈りいたします。

Re: 初めまして

> 流星さん
初めまして、ゾンデ5号です。
前からご覧になっていたのですね。
ありがとうございます。

流星さんのHPを拝見しました。
作品のデータベースなんかは凄いですね。
脇役・チョイ役、DVDに付いてくる「東宝俳優名鑑」に載っていないような役まで載せていて…。
「日本沈没」(73年版)の山本総理の下の名前が、「尚之」だったとは、知りませんでした。
まさかシーホーク号の乗組員に、「宇宙大戦争」のリチャードソン博士ことレオナルド・スタンフォード氏が居たとは…(DVDで確認出来るのかなぁ)。
色々驚かされました。
私も東宝の俳優・女優は主役から脇役まで大好きでたまらないので。

松林監督の話になりますが、戦争への「怒り」は、ご自身の戦争体験から来ているのだと思います。
「太平洋の嵐」のコメンタリーで、酷い状態の遺体(頭が無い、腕が無いetc…)などを見たりと、かなりの修羅場を見て来たようで、その時に感じた「怒り」と「悲しみ」をご自身の作品に表現していたのではないでしょうか。
「帰ってきたウルトラマン」でも監督作品があるのですよね。
大分後半の話ですけど、近いうちに観ようかと考えています。
テレビでの松林監督作品も珍しいですし。

リンクの件は了解しました。
私のブログの方にもリンクを貼ってもよろしいでしょうか?

こんばんは

こんばんは。
早速お返事と私のHPを見て頂き本当にありがとうございます。先ほどリンク集にゾンデ5号さんのブログを追加致しました。
http://www.k5.dion.ne.jp/~god-sf/link.html
2.特撮関連に追加させて頂きました。

リンクは是非貼って頂いてOKですのでよろしくお願い致します^^

東宝バイプレーヤーは詳しく書籍やネット上ではあまり紹介されていないんですよね。映画本編を隅々まで観て俳優を探し、他に東宝俳優について研究されている方から頂いた情報と合わせたものを公開しています。まだまだ未確認の俳優がたくさんいます。今後研究し続けながら作品の感想も作成していきます。
ゾンデ5号さんも東宝俳優がお好きということで、脇役俳優に至るまでの俳優さんの顔を覚えるのに私のHPで役立てて頂けるとうれしいです。作るのに苦労してますが、俳優辞典の更新も進めています。
TV特撮だと初期のウルトラシリーズにも多くの俳優が出てますので、是非未見の作品がありましたら御覧になってみて下さい。

Re: こんばんは

こちらの方にもリンクに追加させて頂きました。

東宝バイプレーヤーを紹介しているページなら、「荻窪東宝」というHPの中の、「東宝俳優名鑑」というページがあったりしますよ。

http://www.ogikubo-toho.com/haiyuu.html

写真だけですが、私なんかは東宝映画を見るときには役立ちました。
俳優辞典の更新も楽しみにしています。

>TV特撮だと初期のウルトラシリーズにも多くの俳優が出てますので、是非未見の作品がありましたら御覧になってみて下さい。

そうですよね。
「ウルトラQ」なんかはゲストで土屋嘉男さんとか石田茂樹さん、沢井桂子さん、平田昭彦さん、若林映子さん、天本英世さんなど、東宝映画では御馴染の俳優・女優が出てらっしゃいますよね。
それが目当てで見たりもするのですが(笑)

No title

この作品に関しては亡くなる直前の前日に観ていて改めて「戦争」という愚行がさり気なく国民に侵食していてそれに踊らされている(とうか勝っている)最中は気付かないけれどミッドウェイ海戦を機にその愚行が当事者の中に(いうまでもなく主人公である北見ですが)露わになっていく過程を丁寧に描き静かな戦争への怒りを感じさせる作品だと思ってますから翌日の監督の逝去は相当ショックでした。
(まあ真珠湾攻撃の勝利の歓喜もオリンピックでの国民共有幻想も実は「同じ」なわけで最近、その熱狂ぶりがアブないものと感じてしまう・・・。)
意外にも戦争の愚行って戦争に「勝利」している最中に反戦とかの意識って皆無なのでないでしょうか。
(だからこそそれに気付いた人はごく少数でしかなく戦時中に「非国民」扱いされたのでしょう)
松林監督の演出も実にそこも丁寧にやってます。
それを踏まえたからこそ後半の狼狽ぶりが実に効いています。
一方、円谷監督の特撮も戦時中の「ハワイ・マレー沖海戦」で出来なかった演出を存分に描きこれも見事です。
(「ハワイ・マレー」では海軍依頼で作られた作品なのに当の海軍は資料すら貸さなかった・・・。そういった悔恨もあったのでしょうね・・・。とはいえ「ハワイ・マレー」では急降下攻撃する戦闘機のイメージが本作品よりも出来が良かったりするので円谷監督にしてみればリベンジの意味もあったのでしょう。)

Re: No title

勝っている時は戦争が馬鹿なこと、だなんて思っておらず、負けてやっと戦争の愚かさに気づく、という北見の姿は当時の日本人の姿そのものなのではないでしょうか。
最近は戦争の記憶も薄れてきて、「戦争は愚かだ」というのが分からない人も出てきているようですが。

>(まあ真珠湾攻撃の勝利の歓喜もオリンピックでの国民共有幻想も実は「同じ」なわけで最近、その熱狂ぶりがアブないものと感じてしまう・・・。)

そうですね。
オリンピックの時の熱狂ぶりとか、マスコミの報道の仕方は戦時下を思わせます。
最近の日本人は、集団的な熱狂状態に陥りやすくなっていて、なお且つそれに乗らない人までもを巻き込もうとしているから恐ろしいものです。

円谷特撮ですが、大プールどころか本物の海まで使用しての撮影で、本当に素晴らしいですね。
「ハワイ・マレー沖」とほぼ同じ様なカットもありますし、やはりそこは円谷監督のセルフリメイクもあったのだと思います。
真珠湾攻撃のカットも冴えまくっています。
今までの不遇を跳ね返せと言わんばかりに…。
またゼロ戦の飛び方も、「ヒコーキ大好き」な円谷監督のこだわりが感じられます(だから最後飛び去って行く飛行機も切ないんですね)。
プロフィール

ゾンデ5号

Author:ゾンデ5号
鉄道、特撮、アニメ、落語、その他もろもろ色々なものが好きな高校生のブログです。
色々な方面のネタを書きます。
特撮と言っても怪獣映画から戦記映画、SF、時代劇、ウルトラシリーズ、仮面ライダーシリーズ、アニメではタイムボカンシリーズ、新造人間キャシャーン、銀河鉄道999が好きです。
好きな俳優は主に東宝の俳優の方が多いです。
声優では故・富山敬さん、岡本茉利さんなどを贔屓しています。
鉄道では乗ること、撮ることが好きです。
好きな車両は583系、485系、455系、東北新幹線200系、E2系、ED75型機関車などが好きです。

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